人材マネジメントの課題
人材マネジメントに取り組むにあたって、スキルマップを活用するケースは多いと思います。しかしそれを行ってもなお、ミスマッチが発生する原因は何にあるのでしょうか。
私はこのようなケースに関して、以下のように考えています。
① スキルマップを正しくデータ化できていない
② 要求スキルを正しく把握できていない
スキルマップの作成では、各人のスキル項目に対してチェックを付けてリスト化します。例えば、Aさんはテスト実施/実行、Bさんは実装、Cさんはテスト設計も可能といった具体的な情報です。
これに基づいて人材をアサインすれば、効率的でミスマッチも減ると期待されます。それらを踏まえ、プロジェクトに合わせて正確な条件を選んでいるにもかかわらず、人材のミスマッチは頻繁に発生しています。
ミスマッチが減らない原因は、スキルマップに必要な情報、それらを加味した検討が不足していることが考えられます。
それでは、具体的にどのような情報が必要なのでしょうか。
私が考えるのは、各人の特徴やスキルを活かし、特定の事業やプロジェクトで良い成果を上げられるための情報です。例えば、筋トレや健康・美容に興味関心がある人は、関連するプロジェクトで貢献できる可能性があります。同様に、ゲームや旅行の趣味がある人は、それぞれの領域での知識や洞察を生かせるでしょう。
しかし、通常業務で、これらの情報を入手するのは簡単ではありません。そこで私がおすすめしたいのが、「雑談」です。
日常の雑談の中で、相手の意外な特性が明らかになることもあります。
雑談から得られた個々の人物像や特性を整理、分析しスキルマップ情報と合わせて検討を進めて適切なプロジェクトや業務を割り当てることで、人材のミスマッチを防ぎプラスアルファの価値を生むことができるはずです。
案件担当者の役割と効果
各人の特性やスキルを理解し、スキルマップを作成するには雑談が必要であることは理解できましたが、これには手間がかかります。
特に事業が好調な時期ほど、作業量やプロジェクトの難易度が増し、スケジュールが緊迫します。また、各プロジェクトの特徴や担当者の顔ぶれ・性格、進捗スピード、合意形成における重要な経緯など、判断に必要な情報を収集するのには時間がかかります。このような状況では、断片的な情報に基づいて判断せざるを得ず、それぞれの顧客の漠然としたニーズや課題に対応しなければなりません。
この問題に対処するために、「案件担当者の存在」が重要になるのです。
企業の多くは、プロジェクトを成功させるためにプロジェクトマネージャー(PM)を配置しています。このPMは各部署や他の企業と連携し、プロジェクトを進行します。さらに、PMが発注先企業と密に連携するためには、営業を通り越した先にいる発注先担当者と円滑なコミュニケーションを取る必要があります。ここで言う発注先担当者として、当社は「案件担当者」という専門のポジションを設けて対応しています。
案件担当者はその名の通り、案件の管理に専念し、専門性をもって案件の責任を担うポジションです。通常のリーダーとは異なり、より社内の事情に精通し、戦略的な視点から社内外の連携を強化します。
これらの担当者は、各案件における売上や経費、過去の好事例から失敗まで、各案件の重要なポイントや関係者、期待値やストーリーを熟知しています。
営業よりも業務的でありながら、リーダーよりも営業的な要素を兼ね備え、広範な権限で様々な業務に対応します。
この案件担当者同士が密な連携を取っていれば、案件そのものやそこで働くスタッフの特性を熟知しているため、お互いの要求を理解し、最適な人材配置が可能です。案件間のスタッフ変更から新たな人材の配置まで、彼らが主導して行い、それをマネージャーに相談することもできます。
案件担当者の動きにより、マネージャーは自分でスキルマップを作成する必要もなく、案件の詳細を把握する手間も省けます。責任を持たせた案件担当者同士の行動を見守り、報告し、協力するだけで十分です。ジャッジする際に必要な情報は案件担当者から十分に提供されるため、マネージャーは真の意味でマネジメントに専念できるようになります。
人材を適切に配置し、チーム内のストレスを軽減させ、その結果、組織としてのパワーを向上できれば、自ずと顧客からの評価は向上します。
例えば、A案件にいるXさんがB案件に適しており、逆にB案件のYさんはA案件向きだと判断された場合、お互いに適切な案件に配置することが重要です。関心やスキルが案件特性に合致することで、テスターとしてのパフォーマンスが向上し、改善提案や重要な観点の指摘ができるようになります。
別の例として、課題解決のためにC案件にジョインしたZさんが課題解決後も関与し続けている場合、現状の案件やポジションは適切でない可能性があります。Zさんを他の案件に配置することで、より活躍の場が広がるかもしれません。
これらの例は簡単に見えますが、実際は案件の状況や関係者の特性、課題とその解決方法を理解する案件担当者の視点が必要になるのです。
プロジェクトを成功に導くコミュニケーション
現代のQA業界では、技術の進歩に伴い、機械学習や自動化ツールの導入が増えています。しかし、人間の直感や柔軟性、独自の判断力はなお不可欠であり、人と人とのコミュニケーションが重要な役割を果たしています。
人材やスキルを最大限に活用するためには、個々のメンバーとの円滑なコミュニケーションが欠かせません。各メンバーがどのような人物であり、どのようなスキルや志向を持っているかを理解することで、個々の潜在的な能力を引き出し、プロジェクトを成功に導くことができます。
特に、案件担当者はプロジェクトに関わるメンバーと密接な連携を取り、コミュニケーションのハードルを低くし、情報を円滑に共有する役割を果たしています。案件担当者の活動により組織全体での協力体制が構築され、プロジェクトの進行がより効率的に行われます。
チームのコミュニケーションを作り出す事例
ただし、全ての企業が案件担当者を配置できる訳ではありません。案件担当者の雇用にはコストが掛かり、少人数でプロジェクトに取り組まなければならない場合もあります。そのようなケースに備えて、リーダーやメンバーがコミュニケーションスキルを向上して、顧客の課題に対していち早くアプローチできる状況を作ることも重要です。
QAの職種は、内向的な人材が集まる傾向が強く、コミュニケーションの課題が顕在化しやすいことが挙げられます。
その課題を解決するアクションプランとして当社が実際に行う取り組みを紹介します。
朝礼の時間に、各メンバーが30秒間のスピーチを行います。テーマは自由で、「起承転結」を盛り込むことが求められます。このトレーニングは短時間で要点を明確に伝えるスキルを養うためのものであり、文脈を整理せずに発話してしまうケースを減少させ、コミュニケーション精度を向上させることを目的としています。
スピーチの内容に対して他のスタッフが質問したり話題を深掘りしたりすることで、受け手が「コミュニケーションが業務プロセスの一環である」という認識が高まり、積極性が向上します。これは口数が少ないQAスタッフにとって非常に効果的であり、口数が少ないことが返ってメリットに思えるほど発言内容がシャープで正確になる傾向があります。
この変化はチーム内だけでなく、顧客とのやり取りにおいても好影響をもたらします。検証プロセスがスピーディーに進行するだけでなく、プロジェクト品質の向上に寄与します。
まとめ
本記事では、人材マネジメントの成功と失敗に焦点を当て、コミュニケーションを通じて各人の特性を理解し、適切な人材配置によって付加価値が生まれる仕組みについて説明しました。適切な人材配置とコミュニケーションは、チーム全体のパフォーマンス向上が期待され、ES・CSの向上に繋がります。
当社のソフトウェアテスト・第三者検証サービスは、プロジェクトに適切な人材をアサインするために、プロジェクトや人材の特性に合わせた提案を行うことに加え、案件担当者の専門性と経験を活かしています。
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