ソフトウェアテストの手法一覧!3種類に分けて紹介

    ソフトウェアテストは、アプリやWebサイトの品質を左右する重要な工程です。当社のアンケート調査でも、欠陥に対する不満の声が多く寄せられており、トラブルの未然防止には的確なテストの実施が欠かせません。<br />
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本記事では、ソフトウェアテストの代表的な技法をわかりやすく解説します。安定した開発とユーザー満足度の向上を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。

    ソフトウェアテストは、アプリやWebサイトの品質を左右する重要な工程です。当社のアンケート調査でも、欠陥に対する不満の声が多く寄せられており、トラブルの未然防止には的確なテストの実施が欠かせません。

    本記事では、ソフトウェアテストの代表的な技法をわかりやすく解説します。安定した開発とユーザー満足度の向上を目指す方は、ぜひ最後までご覧ください。

    ソフトウェアテストの技法

    ソフトウェアの品質を確保するには、目的や状況に応じたテスト技法の選定が欠かせません。仕様や条件が複雑になるほど、経験や勘に頼ったテストでは抜け漏れが発生します。

    欠陥を未然に防ぐには、効果的なテスト技法を理解したうえで適切な活用が重要です。また、限られた工数でも重要な部分に集中したテストが可能となり、コスト削減と品質向上を両立できます。以下では、代表的な3つの技法を解説します。

    ブラックボックステスト技法

    ブラックボックステスト技法は、システムの内部構造を考慮せず、外部からの入力と出力の結果に注目するテスト技法です。

    システムの内部ロジックを知らなくても、仕様や要件にもとづいて正しい動作を確認できます。そのため、ユーザー視点での検証に適しており、受け入れテストやシステムテストなどの段階における確認に向いています。

    ホワイトボックステスト技法

    ホワイトボックステスト技法は、プログラム内部の構造や処理の流れに着目してテストを行う技法です。ブラックボックステスト技法とは対象的に、テストの網羅性を定量的に測れる特徴を持ち、実装上の抜けや欠陥 を早期に発見できます。

    主に、開発者や技術者が実施し、すべての分岐やループ、ロジックが正しく動作するかを確認します。単体テストや結合テストなど、比較的初期工程で多く活用されます。

    経験ベースのテスト技法

    経験ベースのテスト技法は、過去のエラーや欠陥の傾向、テスト担当者の知識や直感を活かして行う柔軟なテスト技法です。仕様書に明記されていない問題点にも気付きやすく、実際の使用環境に即した欠陥の発見に役立ちます。

    網羅性は高くない場合もありますが、短時間で重要な欠陥を見つけやすいという強みがあり、仕様が不明確な場面やスキルの高いテスト担当者がいる現場で効果を発揮します。

    近年、クラウドやIoTの進化により、ソフトウェアの使用環境が幅広くなりました。こうしたなかで、予測不能な欠陥を見逃さないために、経験ベースのテスト技法は実践的で価値の高いアプローチとなります。

    60代以下の全国の男女を対象にした「アプリやソフトウェアでのバグ(動作の不具合)経験について」のアンケートでは、全体の49.6%が不具合を経験したことがあると回答しています。

    「ある」と回答した方が実際に経験した不具合やバグには、以下の内容が寄せられました。

    【どのような不具合やバグに出くわした経験があるか教えてください。(自由回答)】
    「画面が真っ白になる(学生/フリーター)」
    「急にサイトのエラー表示が出てみていたサイトが消える(総務/人事)」
    「入力してもエラーが発生する(営業/販売)」
    「クリックした覚えがないのに、勝手に移行している(金融関係)」
    「リンクに飛べない(総務/人事)」

    なかでも「画面のフリーズ」「フォームに入力できない」といったバグが多く、ユーザー体験に大きな影響を与えます。コードレベルの不備が潜んでいる可能性があり、仕様どおりであっても実装に問題があれば起こり得ます。

    こうしたトラブルは、想定外の使い方や端末環境で起こる可能性が高く、定型的なテストのみでは発見が困難です。 同じ仕様でもテスト技法によって異なる観点からテストができるため、複数の技法を組み合わせ、テストの精度向上を図ることが重要です。

    調査データ引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001581.000044800.html

    ブラックボックステスト技法の種類

    効率的に網羅性の高いテストケースを導き出せるブラックボックステスト技法には、いくつかの種類が存在します。テスト技法の選定が品質に直結するため、適切な技法を使い分けることが重要です。以下では代表的な6つの技法をそれぞれ解説します。

    同値分割法

    同値分割法はテスト範囲を合理的に絞りつつ、確実な動作検証を行うための有効な技法です。この技法では、入力値を性質ごとに同じグループ(同値クラス)に分割し、各グループから代表値を選んでテストして、無駄なく欠陥を検出します。

    すべての数値を試す必要がなく、限られた時間やリソースでも品質を維持しやすい点がメリットです。欠陥によってユーザーが本来やりたかった操作を失わないためにも、同値分割法は早期発見と効率的なテストを実現する実践的な技法といえるでしょう。

    境界値分析

    境界値分析は入力の最小値や最大値、その直前や直後といった欠陥が出やすいとされる“境界”に注目し、優先的に検証する技法です。通常の利用では見落とされやすいエラーを未然に防ぎ、効率的かつ実践的なテスト技法といえます。

    同値分割法と組み合わせて使われることが多く、 テストの精度向上や工数削減に役立つのが特徴です。

    デシジョンテーブルテスト

    デシジョンテーブルテストは、条件とその結果を表で整理し、それぞれの組み合わせに対応する処理が適切に行われているかを確認する技法です。

    複数の条件とその組み合わせによって動作が変わるシステムでは、漏れのないテスト設計が欠かせません。条件が複数ある場面でも、すべてのパターンを網羅的に洗い出せるため、論理的な抜けや矛盾を防ぐ効果があります。

    すべての組み合わせをテストするのは現実的でない場合もありますが、優先度や重要度に応じてケースを絞ることで効率的なテスト設計が可能です。業務ロジックが多いアプリケーションや判断ルールが複雑な機能に効果が期待できます。

    状態遷移テスト

    状態遷移テストは、システムの「状態」と、ある入力や操作によりどのように変化するかという「遷移」に着目したテスト技法です。

    このテストにおいて、状態と遷移を図として可視化し、それぞれのパターンを網羅的に確認すると、想定外の動作や不正な画面遷移を未然に防止できます。

    状態遷移図や状態遷移表を使って「現在の状態」「発生するイベント」「遷移先の状態」を整理し、想定どおりの遷移やエラー処理が行われるかを確認します。ログイン管理、ワークフロー、申請・承認など状態管理が重要なシステムに適しており、制御漏れや仕様ミスの発見に効果的です。

    ユーザーの操作が途中で破綻しないようにするためにも、状態遷移テストはシナリオに沿った品質確認を行ううえで、効果的な技法といえます。

    ユースケーステスト

    ユースケーステストは、ユーザーの行動や目的に基づいて一連の操作の流れを再現し、期待どおりに機能が動作するかを検証する技法です。業務フローやユーザー行動が明確なシステムに適しています。

    このテストでは、操作の前後関係や実利用時の状況を想定してテストケースを作成するため、見落としやすい欠陥を見つけやすくなります。

    ホワイトボックステスト技法の種類

    ホワイトボックステストでは「制御フローテスト」と「データフローテスト」を通じて、ソースコードの内部構造や処理の流れを確認することで、実装上の欠陥の早期発見が可能です。ここではそれぞれのアプローチについて解説します。

    制御フローテスト

    制御フローテストは、プログラムの分岐やループなどの処理の流れを網羅的に確認し、想定外のロジックミスを検出する技法です。命令網羅・分岐網羅・条件分岐といった基準を設け、すべての命令や分岐が正しく実行されるかを確認します。

    たとえば、条件分岐の一部が未実行のまま反映されていた場合、特定操作でのみ欠陥が発生する可能性があります。こうしたミスを事前に洗い出せれば、問い合わせにつながらない欠陥も早期に解消できるでしょう。

    再現性が低いエラーの予防も期待できるため、制御フローテストは実装レベルでの信頼性を高める重要な技法といえます。

    データフローテスト

    データフローテストは、変数の定義・使用・破棄といった一連の流れを確認し、不要な処理や誤った変数操作を検出する技法で、データの不整合やロジックミスを見つけやすいという特徴があります。

    主に「変数が定義されたあとに正しく使用されているか」「未定義のまま使用されていないか」といったデータの流れに起因する欠陥の検出に効果的です。

    制御フローテストでは見逃されやすい変数の扱いに関する欠陥に対応できるため、ユーザーからの報告に依存せず、根本的なエラーの予防につながります。データフローテストは、安全で信頼性の高いコード実装を支える重要な技法です。

    同様のアンケートで「ある」と答えた方に向けた「アプリやwebサイトなどの利用時に不具合やバグに出くわした際、フィードバックや問い合わせをしたことはありますか?」という質問では、69.5%の方が「ない」と回答しました。

    ユーザーが問い合わせをしなかった理由として、以下のような回答が寄せられました。

    「面倒だから」
    「他の人も同じ問い合わせをしていると思ったから」
    「再起動や強制終了で問題が解決したから」
    「そのうち直るから」

    ユーザーの多くが「問い合わせは面倒」 と感じており、欠陥を発見しても報告しない傾向が強くなっています。こうした状況では、開発側が内部の欠陥を自ら見つけて修正する体制が欠かせません。

    経験ベースのテスト技法の種類

    経験ベースのテストでは、エラー推測や探索的テストを活用して、仕様外の欠陥にも対応可能です。代表的な4つの技法をそれぞれ解説します。

    エラー推測

    エラー推測は、過去の動作状況や故障の傾向をもとに、欠陥が発生しそうな箇所を重点的にテストする技法です。たとえば、入力ミスが頻発する項目や、複雑な条件処理がある画面など、リスクの高い部分を狙ってテストすることで、簡単に起きるエラーや欠陥・故障を未然に防げます。

    信頼性を損なわないリリースを実現するうえで、有効なアプローチといえますが、形式化されていないことから熟練したテスト担当者のノウハウが試される技法でもあります。

    探索的テスト

    探索的テストは、テスト設計と実行を同時に行いながら、テスト担当者の知見と観察力を活かして予期せぬ欠陥を探す技法です。決まったパターンに縛られないため、定型テストでは見逃しがちな欠陥にも対応できます。リリース後に信頼を損なう事態を防ぐうえで、有効なテストアプローチといえるでしょう。

    エラー推測と同様、テスト担当者の経験や知識が成果に大きく影響します。熟練者が担当することで、欠陥の発見率を高められます。

    セッションベースドテスト

    セッションベースドテストは、時間や目的をあらかじめ定め、その範囲内で自由に操作しながら欠陥を探す技法です。実施後にはセッションの内容を記録するため、探索的テストの利点を保ちつつ、報告性や再現性も確保できます。

    限られた時間でも信頼性のある品質チェックが可能となり、ユーザーの不安を未然に抑える有効な手段といえます。

    チェックリストベースドテスト

    実践的な技法です。画面の共通仕様やエラーメッセージ、入力チェックなどの繰り返し発生する確認作業に適しています。

    要件や過去の欠陥をもとにチェックリストを構築すれば、誰が実施しても一定の品質が確保されやすく、テスト内容の共有や引き継ぎにも役立ちます。

    ソフトウェアの信頼性を損なわないためには、テストの抜け漏れを防ぐ工夫が欠かせません。多忙な開発現場や短期間でのリリース対応でも、抜けや偏りを防ぎながら着実なテストが可能になるため、ユーザーの信頼低下を回避する効果的なアプローチといえます。

    同様のアンケートにおいて「アプリやwebサイトなどをリリースする前に、しっかりテストされていることは重要だと思いますか?」という質問では、91.2%の方が「思う」と回答しました。回答ごとの詳細の割合は以下のとおりです。

    「とても思う」66.6%
    「やや思う」24.6%
    「あまり思わない」4.5%
    「まったく思わない」4.3%

    「思う」と回答した理由として、以下のような声が寄せられています。

    「ユーザーにテストさせるような真似はユーザーの信頼を損なうし、商品やサービスにも悪い印象を持たれるだろうから。(とても思う)」
    「製品化されてから不具合やバグなどが見つかると、その分使用者にもストレスでそのサイトの信頼性がなくなるから。(とても思う)」
    「アプリの信用度に関わる重要な特性だから。(とても思う)」
    「無駄な時間を取られるのが嫌だから。(やや思う)」
    「利用者に迷惑がかかるから。(やや思う)」

    リリース前のテストを重視するユーザーの多くが「信頼性が下がる」という理由を挙げています。こうした課題を解決し、短期間で確かな品質確認を行うには、柔軟性と計画性を兼ね備えた検証が不可欠です。

    テスト技法を開発に取り入れる際のコツ

    有効なテスト技法を取り入れるには、コツを押さえて選定することが大切です。ここでは3つのコツを解説します。

    適切なテスト技法を見極める

    テストの精度と効率を高めるためには、システムの特性や目的に応じて適切な技法の選択が欠かせません。単純な入力確認や画面遷移であればブラックボックステストが適しており 、ロジックの詳細を確認するにはホワイトボックステストが有効です。

    また、仕様外の挙動を見つけたい場面では経験ベースの技法が効果を発揮します。

    このように、プロジェクトの目的・仕様・納期などをふまえたうえで、場面ごとに適したテスト技法の見極めが、品質と効率の両立に直結します。

    複数のテスト技法を組み合わせる

    ソフトウェアの開発で起こり得る幅広いリスクに対応するためには、複数のテスト技法を組み合わせる必要があります。テスト技法によって特徴が異なるため、それぞれの強みを活かすことで柔軟な品質管理が可能です。

    例えば、データ処理を含むアプリケーションでは制御フローテストでコードの抜けを防ぎつつ、ユースケーステストで実際の利用シナリオを検証すれば、ユーザー体験の向上にもつながります。

    単体のテストでは限界があるため、状況に応じて複数の技法を使い分け、抜けのない丁寧なテストを実施しましょう。

    ツールを上手く活用する

    テストの品質と効率を両立するには、手動だけでなくツールを取り入れた運用が効果的です。近年はテスト自動化や管理の支援を行う多様なツールが登場しており、活用次第で作業負担を大きく減らせます。

    たとえば、テスト自動化ツールを使えば、欠陥の発生を見出す回帰テスト の手間を減らしつつ繰り返しのテストが可能になります。 また、テスト管理ツールではケースや結果を一元的に可視化でき、チーム間の連携もスムーズです。さらに、エビデンスの記録や進捗管理に役立つ点も見逃せません。

    状況に応じて適切なツールを導入すれば、人的ミスを防ぎながら工数を削減でき、限られた開発期間でも安定した品質確保につながります。

    まとめ

    ソフトウェアテストは、欠陥の早期発見と品質向上に欠かせない工程です。欠陥や故障によるユーザー離れや信頼低下を防ぎ、安心して使える製品の提供を実現します。

    自社でテストが困難な場合は、専門的な知識を持つ業者に依頼するとよいでしょう。ポールトゥウィン株式会社(PTW)はJSTQBプラチナパートナー認定を受けたテストのプロ集団として、30年にわたる経験と実績を持ち、テスト計画から設計、実施まですべてのフェーズをサポートするソフトウェアテストサービスを提供しています。

    高度な技術と専門知識を活かし、無駄のない効果的な検証を実現するための最適なテストプランをご提案いたします。

    Web・アプリケーション・IoT・組み込み機器など、多様なプロダクトの検証実績があり、プロダクト特性や業務慣習に応じた最適なテスト計画と実行を一貫して支援可能です。

    また、5,000台超の端末・600機種以上のテスト環境を保有し、常駐・ラボ型・テレワークなど柔軟な体制で対応します。ソフトウェアテストの実施を検討中の方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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