リグレッションテスト(回帰テスト)とは?
プログラムの改修や機能の追加によって、既存の正常な動作に予期せぬ影響が出ていないかを確認するためのテストです。ソフトウェア開発が進むにつれて構造が複雑化し、少しの修正でも思わぬ箇所に影響が及ぶ場合があります。
そのため、機能単位の検証に加えて、変更内容が周囲に悪影響を及ぼしていないかを確かめる工程が欠かせません。リグレッションテストは、こうした影響を未然に把握し、品質の安定を図る目的で実施されます。
たとえば、単体テストや結合テスト、総合テストの完了後、もしくはバグ修正を行った際などに行われるのが一般的です。ここからは、デグレーションとの違いや目的、実施しないリスクについて解説します。
リグレッションテストと混同されやすい用語に「デグレーション」があります。デグレーションは、プログラムの修正や新機能の追加が原因となり、正常に動作していた部分にバグが生じる現象のことです。
たとえば、機能追加後に以前は問題なかった処理が正しく動作しなくなるケースなどが該当します。こうした現象は略して「デグレ」や「デグレード」と呼ばれることが一般的です。
一方、リグレッションはあくまでもテスト手法を指す言葉です。このような品質の低下が発生していないかを確認する際に役立ちます。
つまり、デグレーションはバグの発生そのものを表す言葉であり、リグレッションテストはその有無を見極めるための行為という点で異なります。
リグレッションテストの目的
プログラムの修正や新たな機能の追加が、意図せずほかの正常な機能に悪影響を及ぼしていないかを検証するのが目的です。開発の過程では、ひとつの変更が予期せぬ箇所に波及し、動作に支障をきたすことがあります。
とくに、基盤となるコードや既存の仕組みに手を加えた場合、その影響は広範囲に及ぶ可能性があります。たとえば、ECサイトで決済方法を更新した際、購入履歴の表示や会員登録機能まで動作に支障が出るなどです。
こうしたバグを事前に見抜き、安定性を保つためにリグレッションテストが実施されます。
リグレッションテストを行わないリスク
リグレッションテストを省略すると、修正や機能追加によって既存の動作に予期せぬバグが発生していることに気づけないリスクがあります。実施しないと、以下のようなリスクがあります。
● ソフトウェアの信頼性が低下する
● ソフトウェアの安全性が低下する
● ソフトウェアの改修コストが増大する
● 担当者が意識すべきユーザーの期待
各リスクについて解説します。
修正作業によって、本来正常に動作していた部分に思わぬバグが生じるおそれがあります。検証を省いたまま改修を進めると、結果としてバグが累積しやすくなります。
気づかぬうちに品質が落ち続け、最終的には利用者からの信頼を失う要因になりかないため、注意しなければなりません。
怠ると、セキュリティ面に見落としが生じやすくなります。改修によって新たなバグが発生しても、検証が不十分であれば、気づかずに悪用される危険性が高まります。
情報漏洩やサービス停止といった事故を防ぐためには、変更のたびに安全性を確かめる工程を欠かさず実施する必要があります。
バグの発見が遅れやすくなり、修正にかかる手間や費用がかさむ傾向にあります。問題が早期に見つかれば影響は限定的で、対応も迅速に行えます。
しかし、発見が後手に回ると影響範囲が広がり、原因特定にも時間がかかります。その結果、修正作業が大規模化し、テストのやり直しや仕様調整が必要となることもあるでしょう。
ユーザーは、サービスを利用する際にバグがないことを強く望んでいます。実際に行われたアンケートでは「リリース前にしっかりテストされていることが重要だと感じる」と回答した人が9割を超えています。
さらに、そのうち約7割が「非常に重要」と答えています。この結果からも、利用者の多くが品質に対する信頼性を重視していることが読み取れるでしょう。
調査データ引用元: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001581.000044800.html
開発担当者は、技術的な完成度だけでなく、ユーザーの安心感にも配慮して丁寧なテストを徹底する姿勢が求められます。
リグレッションテストの実施タイミング
リグレッションテストは、変更や修正のたびに実施することが基本ですが、常に全範囲を網羅的に行うのは現実的ではありません。そのため、影響範囲や開発フェーズに応じて、最適なタイミングを見極めることが重要です。主な実施のタイミングは、以下のとおりです。
● バグの修正後
● 主要機能の追加後
● 各テスト工程の終了時
たとえば、単体テストや結合テストの完了後、修正の影響がほかの箇所に波及していないかを確認するなどです。バグを修正した場合、その対応箇所のみならず、周辺機能にバグが出ていないかも合わせて確認する必要があります。
また、新たな機能を加えた場合も、既存の動作が正常に保たれているかを検証します。さらに、サービスを公開する前には、最終確認として実施し、開発中のあらゆる変更が安定した動作を妨げていないかをテストしましょう。
リグレッションテストの流れ
1. 影響範囲を分析する
2. テストケースを作成する
3. テスト環境を整備する
4. テストケースを実行する
5. テスト結果を分析する
各工程について解説します。
まずは、プログラムの変更によってどの部分に影響が及ぶかを正確に見極めます。ソースコードだけでなく、データベースの構成や外部サービスとの連携など、あらゆる依存関係を洗い出しましょう。
影響が想定される機能や処理を抽出し、直接的な変更箇所に加えて、間接的に影響を受ける可能性のある箇所も丁寧に調査します。共有リソースやデータの流れまでを考慮に入れるのがポイントです。
システムの要件を正確に読み取り、それに基づいた検証項目を具体的に組み立てていきます。入力値や期待される出力、実行前後の条件などを明文化し、目的に応じた検証内容を明確にします。
テストケースでは、既存のケースをベースに機能追加や変更内容に応じて見直し・追加・修正を行いながら、常に最適な状態に保つことが一般的です。また、将来的なメンテナンスや再実行を見据え、構成のわかりやすさや再利用性にも配慮した見直しを行うことが重要です。
リグレッションテストは複数回にわたって実施する必要があるため、効率的な環境づくりが欠かせません。変更が加えられた機能や過去にバグが多発した領域を優先的に検証対象に含め、効率的に実施しましょう。
環境構築では再現性や安定性にも注意を払い、確実に結果が得られる状態を整えておくことが求められます。
実行する際は、本番と同等の条件を再現できる環境を整えたうえで取り組むことが必要です。あらゆるOSやブラウザ、端末での挙動を確認することで、利用者の環境に依存するバグを未然に防げます。
テスト実行時には、一つひとつのケースを丁寧に進め、得られた結果を正確に記録します。予期しない動作やエラーが確認された場合は詳細に報告し、開発担当と連携して早期の対応につなげましょう。
分析では検出された問題の重要度や影響範囲を見極めたうえで、対応の優先順位を整理することが求められます。繰り返し発生しているバグや特定の条件下でのみ起こる不安定な挙動など、傾向を把握しましょう。
また、成功したケースと失敗したケースを比較することで、改善すべき設計や運用のヒントも得られます。
リグレッションテストの観点を洗い出すコツ
リグレッションテストの観点を洗い出す際は、すべての機能を対象にするのではなく、「どこに影響が及ぶ可能性が高いか」「どの機能が特に重要か」といった視点で絞り込むことがポイントです。洗い出しのコツは、以下のとおりです。
● システムのメイン機能は必ず対象にする
● プロダクトリスクを抽出する
● 担保したい品質や期間を定めること
● ユーザー視点を取り入れる
それぞれのコツについて解説します。
テストを設計する際には、中心的な役割を担う主要機能を外さないようにしましょう。利用頻度が高く、ユーザー体験に直結する操作や処理は、些細なバグでも影響を及ぼす可能性があります。
そのため、リニューアルやバグ修正を行った際には、目立った変更箇所だけでなく、全体の土台となる主要機能に焦点を当てて検証しましょう。
効果的にテストを実施するには、プロダクトリスクの把握が欠かせません。システム上で問題が発生した際に、どの機能が業務やサービスに深刻な影響を与えるのかを事前に洗い出すことが重要です。
影響度や障害の頻度、過去のバグ履歴などを参考にしながら、とくに注意すべき箇所を明確にしておくと、テストの優先順位を適切に判断できるでしょう。
テスト観点を設定する際は、どの程度の品質を目指すかと、確保できるテスト期間を明確にしましょう。求める品質レベルが高くなるほど観点の粒度は細かくなり、検証範囲も広がる傾向があります。
しかし、限られた期間内ではすべてを網羅することが難しくなるため、リソースに応じて優先順位を見極めることが必要です。ユーザーの利用手順を踏まえた仕様理解を前提に、現実的な検証方針を立てることが求められます。
テスト観点を洗い出す際は、実際にサービスを利用するユーザーの立場で操作性や満足度を見極めることが欠かせません。機能単位での確認にとどまらず、テキスト入力のしやすさやレイアウトの見やすさなど、利用中の体験を具体的に想像するとよいでしょう。
画面の各要素に着目して観点を細かく分解し、重要度や使用頻度に応じて優先順位を設定していくことが求められます。
効果的なリグレッションテストのポイント
リグレッションテストを形だけ実施しても、品質向上にはつながりません。重要なのは、「限られた時間やリソースの中で、どれだけ効果的に実施できるか」です。ポイントは、以下のとおりです。
● 優先順位を付けて実施する
● 繰り返し実行する
● 変更のたびにテストケースを拡充する
● すべてのテストレベルで行う
● テストケースの粒度を統一する
各ポイントについて解説します。
すべてのケースを網羅的に検証するのが理想とされますが、実際には時間や人員に制限があるため、優先順位の設定が欠かせません。重要な機能や利用頻度の高い部分、過去にバグが多く発生した箇所を優先して検証しましょう。
そうすることで、限られたリソースを効率的に活用できます。
同じ検証内容を継続的に実施することで、より高い効果を発揮します。一般的なテスト原則では、同じ検証を繰り返しても新たな欠陥は見つかりづらいとされます。しかし、品質の安定性を重視するリグレッションテストでは、この考え方は当てはまりません。
同じ条件で問題が発生しないことを何度も確認することで、デグレの抑制効果を高められるでしょう。
リグレッションテストでは、ソフトウェアに変更を加えるたびに対象範囲を広げていくことが求められます。修正された箇所だけでなく、影響を受ける可能性のあるほかのモジュールや関連システムにまで目を向けるようにしましょう。
リグレッションテストは、単体・結合・システムといった各段階すべてにおいて実施することが重要です。開発が進むにつれ、機能の結合度や影響範囲は拡大するため、後工程でバグが判明すると修正作業にかかる工数も比例して増加します。
各フェーズで小さな段階から着実に検証を重ねていくことで、深刻な問題を未然に防ぎ、修正範囲も最小限に抑えることが可能になります。
効率的に進めるには、テストケースの粒度をそろえておくことが重要です。粒度が統一されていれば、複数人が同時に作業を分担しやすくなり、短期間での実行にも対応できます。
また、自動化を進めるうえでも、一定の粒度で整備されたテストケースは扱いやすく、スムーズな導入につながるでしょう。
※ こちらの記事では、ソフトウェアテストについて詳しく解説しています。
必要性や7原則についても取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
リグレッションテストは自動化するのがおすすめ
繰り返し実行されることが前提のリグレッションテストは、人手に頼ると工数が膨らみ、品質管理の効率が低下します。とくに変更やリリースの頻度が高い現場では、同じテストを何度も実行する必要があり、手動ではミスや属人化のリスクも増してしまいます。
このような背景から、国際的なテスト資格制度ISTQBでも、リグレッションテストは自動化の優先対象とされています。ここからは、自動化のメリットやデメリット、効果的なケースを解説します。
リグレッションテストにおける自動化は、作業の効率化だけでなく、テストの品質や一貫性を維持するうえでも大きな効果を発揮します。繰り返し実行されるテストを自動化することで、人的ミスの削減やテスト実行時間の短縮が可能になり、開発スピードの向上にもつながります。
メリットは以下の3つです。
● 作業を効率化できる
● 精度が向上する
● リソースを最適化できる
各メリットについて解説します。
■作業を効率化できる
自動化することで、反復作業の負担を軽減でき、手作業より素早く正確に作業を進められるようになります。テストスクリプトを一度作成すれば、変更や修正があるたびに再利用できるため、同じ作業を繰り返す必要がなくなります。
また、大量のテストケースを短時間で処理できる点も自動化の大きな利点です。修正後の品質確認を迅速に行えることから、開発からリリースまでのスケジュールも短縮できます。
■精度が向上する
自動化によって人為的なミスを防ぎ、より信頼性の高い結果を得ることが可能となります。手作業では見落としがちな細かな挙動も、自動化されたスクリプトによって確実に検証できるため、テストの正確性が向上します。
また、膨大なパターンを網羅的にチェックできるため、手動では対応しきれないケースにも対応可能です。毎回の変更時に自動でテストを実行する仕組みを整えれば、バグの早期発見にもつながるでしょう。
■リソースを最適化できる
自動化ツールは、一定の精度で長時間にわたり繰り返しの作業を実行できるため、人手に頼る場合に比べてミスの発生を抑えやすくなります。テスト担当者の作業負担を軽減できることから、限られた人員をより戦略的な業務に振り分けることも可能です。
初期の環境構築には手間がかかるものの、運用を重ねるほどに人件費や稼働時間の削減につながります。
自動化には多くのメリットがありますが、すべてのテストを自動化すればよいわけではありません。初期の導入コストやスクリプトの保守負担、環境に依存する要素など、注意すべき点も多く存在します。デメリットは以下のとおりです。
● 導入や開発にコストがかかる
● スクリプトの保守が必要
● 人間の代替にはならない
それぞれのデメリットについて解説します。
■導入や開発にコストがかかる
自動化するには、専用ツールの導入やスクリプト開発にかかる初期費用だけでなく、テストケースの更新や環境の維持にも継続的なコストが発生します。自動化は長期的な効率化に貢献しますが、運用までを見据えた費用対効果の検討が欠かせません。
安易に導入を進めてしまうと、期待した成果が得られない可能性もあるため、現状の課題と照らし合わせて慎重に判断する必要があります。
■スクリプトの保守が必要
自動化されたテストは、登録された内容どおりにしか実行できません。システムに変更が加わるたびにスクリプトの更新が必要になります。
仕様変更が頻繁に発生するプロジェクトでは、スクリプトの修正作業が負担となり、自動化の利便性が薄れる可能性があります。
■人間の代替にはならない
自動化テストは繰り返し作業の効率化に役立つ一方で、すべての工程を置き換えるものではありません。仕様の曖昧さや予期せぬ挙動といった、人の判断や感覚が求められる領域では、自動化だけでは対応しきれない部分が生じます。
たとえば、ユーザー視点に立った操作感の確認や画面表示の違和感といった微細な違いは、人による確認が欠かせません。自動化と手動のテストは、それぞれの強みを活かして併用することが求められます。
自動化がとくに効果を発揮するのは、ひんぱんに繰り返し実行されるテストです。なかでも単体テストは対象範囲が明確で修正も比較的少ないため、自動化に適しています。
また、多様なデータパターンを入力して結果を確認するバリエーションテストや修正後の動作確認を目的とした保守テストも自動化と相性がよいとされています。
まとめ
リグレッションテストは、複数の工程にまたがって実施されるテストタイプの1つであり、ソフトウェアの品質を安定させるうえで欠かせない検証手法です。改修や機能追加による予期せぬバグを事前に検出し、信頼性や安全性を維持することが目的となります。
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