アクセシビリティテストとは?配慮義務化の背景や重要性・WCAG基準を解説

    アクセシビリティテストとは、視覚や聴覚、運動、認知などさまざまな障がいを持つ人々が、Webサイトやアプリケーションを問題なく利用できるかを確認するソフトウェアテストです。<br />
<br />
本記事では、基礎知識からWCAG基準、具体的なテスト方法まで解説します。

    アクセシビリティテストとは、視覚や聴覚、運動、認知などさまざまな障がいを持つ人々が、Webサイトやアプリケーションを問題なく利用できるかを確認するソフトウェアテストです。

    本記事では、基礎知識からWCAG基準、具体的なテスト方法まで解説します。

    アクセシビリティテストとは?

    アクセシビリティテストは、デジタル体験を誰もが利用できるように、機能やUIを最適化するためのソフトウェアテストです。視覚障がい、聴覚障がい、運動障がい、認知障がいなど、さまざまな制約を持つ利用者がWebサイトやアプリケーションにアクセスできるかを確認します。

    このテストの目的は、WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)などの国際的なアクセシビリティ標準への準拠を確認し、すべての人にとって使いやすいインクルーシブな体験を提供することにあります。

    アクセシビリティは「特別な配慮」ではなく、すべての利用者にとっての使いやすさを追求する取り組みです。たとえば、一時的にけがをして片手が使えない状況や、騒がしい環境で音声をオフにしている場合でも、誰もが快適にサービスを利用できることを目指します。

    アクセシビリティの例

    身近な例として、スマートフォンの文字拡大表示、音声読み上げ、骨伝導による音声伝達、ハンズフリー通話、音声入力などがあります。これらは視覚や聴覚、運動機能に制約のある方だけでなく、すべての人の利便性向上に貢献しています。

    日常生活では、駅のエレベーターや飲食店での車いすスペース確保も該当します。Webにおいては、動画への字幕提供、キーボード操作対応、画像への代替テキスト付与などが重要です。

    電車内での字幕表示や屋外での見やすいコントラスト確保など、一時的な状況への配慮も、障がいの有無に関わらずすべての利用者にメリットをもたらします。

    【2024年4月】ウェブアクセシビリティの合理的配慮の提供が義務化!

    2024年4月1日、改正障害者差別解消法の施行により、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。ただし、ウェブアクセシビリティの確保自体は「環境の整備」に分類され、引き続き努力義務です。直接的な罰則はありません。

    しかし、努力義務だからといって対応を後回しにするのはリスクを伴います。とくに米国では、アクセシビリティに配慮していないWebサイトへの訴訟が急増しています。日本でも同様の事態が起こる可能性があり、企業のレピュテーション保護の観点からも、積極的な対応が求められます。

    出典:政府広報オンライン「ウェブアクセシビリティとは? 分かりやすくゼロから解説!」
    https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202310/2.html

    なぜアクセシビリティテストが重要なのか?

    アクセシビリティテストは、法令遵守だけでなく、企業にとって多様なビジネスメリットをもたらします。対応をコストではなく、事業成長への投資として捉えることが重要です。

    ユーザー体験を向上させるため

    アクセシビリティの改善は、障がいを持つ方だけでなく、すべての利用者のユーザー体験向上に直結します。

    動画の字幕は聴覚障がいのある方だけでなく、騒がしい環境や静かな場所での視聴時にも役立ちます。適切なコントラスト比や文字サイズの確保は、視覚障がいのある方や高齢者、屋外閲覧時の見やすさを向上させます。

    このように、アクセシビリティを意識した設計は、離脱率の低下、滞在時間の増加、顧客満足度の向上といった具体的な成果につながります。

    より広いユーザーにリーチするため

    WHOによると、世界人口の約16%(13億人以上)が何らかの障がいを抱えています。アクセシビリティ対応により、この膨大な潜在顧客層にリーチでき、売上増加やコンバージョン率向上につながります。

    アクセンチュアの調査では、インクルーシブな企業は一般企業と比較して、収益が1.6倍、純利益が2.6倍、利益が2倍高いという結果が出ています。

    間接的にSEO効果を高めるため

    WCAG準拠により、画像への代替テキスト提供やHTML構造の最適化が進むことで、検索エンジンのクローラーがコンテンツを正確に理解しやすくなります。結果として、検索ランキングの向上やトラフィック増加が期待できます。

    企業の社会的責任(CSR)を果たすため

    現代社会において、企業には利益追求だけでなく社会全体への貢献も求められるようになっており、これは企業の社会的責任(CSR)と呼ばれます。

    アクセシビリティへの取り組みもCSRの一環といえ、包摂性や多様性への配慮を示すことは、顧客からの信頼獲得につながります。

    ブランドの価値を高めるため

    CSRに関連して、アクセシビリティに積極的に取り組む姿勢は、企業のブランドイメージ向上にもつながります。

    ウェブアクセシビリティの国際基準「WCAG」とは?

    WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、W3C(World Wide Web Consortium)が策定したウェブアクセシビリティに関する国際的なガイドラインです。世界的な標準として各国で採用されており、日本のJIS X 8341-3:2016とも連携しています。

    WCAGは、テクノロジーの発展に合わせて継続的にアップデートされています。WCAG 2.0は2012年に国際規格ISO/IEC 40500:2012として承認され、日本のJIS規格とも同一の内容です。WCAG 2.1では、モバイルデバイスのアクセシビリティ強化を目的に17の達成基準が追加されました。

    最新版のWCAG 2.2は、認知障がいを持つ利用者や高齢者への配慮をさらに充実させた内容となっています。W3Cは常に最新版の使用を推奨しているため、最新動向を把握しておくことが重要です。

    4つの原則丨知覚可能・操作可能・理解可能・堅牢

    WCAGは4つの基本原則で構成されています。

    まず「知覚可能(Perceivable)」は、情報やUIコンポーネントが利用者に知覚できる方法で提示されることを求めます。画像には代替テキスト、動画には字幕や音声解説を提供し、色覚障がい者向けには色だけに頼らない情報提示を行います。

    次に「操作可能(Operable)」は、UIコンポーネントやナビゲーションが操作可能であることを定義します。すべての機能をキーボードのみで操作できるようにし、十分な時間を確保し、発作を誘発する点滅や閃光を避けることが求められます。

    「理解可能(Understandable)」は、情報やUI操作が理解可能であることを意味します。ナビゲーションをわかりやすくし、エラーメッセージを明確にし、簡潔で理解しやすい言葉を使用します。

    最後に「堅牢(Robust)」は、コンテンツが支援技術を含む多様なユーザーエージェントで確実に解釈できるよう堅牢であることを求めます。構造化されたHTMLの記述、マルチブラウザ・クロスプラットフォームでのテスト、WAI-ARIAの適切な実装などが該当します。

    3つの適合レベル

    WCAGには、3段階の適合レベルが設定されています。

    レベルAは最低限の基準で、ウェブアクセシビリティを確保するための基本要件です。画像への代替テキスト付与、動画の自動再生停止、キーボード操作への対応などが含まれます。

    レベルAAは標準的な基準で、多くの国や企業、日本の公的機関で推奨されているレベルです。適切なコントラスト比(テキストと背景で4.5:1以上)の維持、テキストサイズ変更への対応、動画へのキャプション提供、見出しとラベルの明確化などが求められます。

    レベルAAAは最高水準の基準ですが、すべてのコンテンツで達成することは現実的ではないため、サイト全体の一般的な方針としては推奨されていません。可能な範囲で目指すべき目標として位置づけられています。

    企業のWebサイトでは、まずレベルAAの達成を目標とすることが一般的です。

    アクセシビリティテストの方法丨手動と自動

    アクセシビリティテストには、自動テストと手動テストの2つの手法があり、それぞれに得意分野があります。自動テストは「速く・広く」機械的に判断可能な項目をチェックするのに優れ、手動テストは「深く・丁寧に」人の目や感覚に依存する項目を確認するのに不可欠です。

    両方を組み合わせることで、初めて実際に使いやすいWebサイトが実現できます。

    自動テスト

    自動テストは、ツールやソフトウェアを使用してアクセシビリティの問題を自動的に検出する手法です。HTML構造の確認、ラベルの有無確認、コントラスト比チェックなど、明確な基準で判断できる項目を効率的に処理できます。

    主なメリットは、効率性と早期エラー発見、広範囲のチェックが可能な点です。多数のページを一括でテストでき、開発の初期段階で問題を発見できます。

    ただし、内容の妥当性や文脈など「人にしか判断できない」部分の検出には限界があります。一般的に、自動テストで検出できるアクセシビリティの問題はせいぜい3割程度といわれており、Deque Systemsのaxeを用いても6割近くが限界です。

    代表的なツールには、axe DevTools、WAVE、Lighthouse、W3C HTML Validator、miChecker(総務省提供)、mabl、accessiBe、Siteimproveなどがあります。

    手動テスト

    手動テストは、人間が実際にWebサイトやアプリケーションを使用して問題を特定する手法です。自動テストでは見落とされがちな課題を発見でき、WCAG基準の70%以上が手作業によるレビューを必要とします。

    主なメリットは、高い精度での確認と、自動では検出できない問題の発見です。

    具体的な方法として、キーボード操作のみでのナビゲーション確認(Tabキー、矢印キー、Enter/Spaceキー)、スクリーンリーダー(NVDA、JAWS、VoiceOverなど)による読み上げ順序や意味の伝わり方の確認、画面拡大や配色反転による視認性チェック、動画コンテンツの代替手段(字幕、音声解説)の確認などがあります。

    デメリットは、人的リソースを必要とし、多数のページでは非効率になる点です。そのため、主要なページや共通コンポーネントに絞って実施することが現実的です。

    【重要】開発の早い段階からアクセシビリティテストを実施しよう

    アクセシビリティテストは、開発の初期段階から実施することが極めて重要です。

    早期導入により、開発プロセスの合理化、リソース(時間、コスト)の節約、市場投入までの時間短縮、訴訟リスクの回避、ユーザーベースの拡大、製品のスケーラビリティ向上といった多くのメリットが得られます。

    アクセシビリティを後回しにすると、後段階での修正コストが大幅に増加します。設計段階から基準を組み込むことで、手戻りを最小限に抑えられます。

    テスト計画から実作業までトータルで提案できる専門家を活用することで、効率的なアクセシビリティ対応が可能になります。開発初期段階から専門的な知見を取り入れることで、確実性の高いアクセシビリティ基準の実装が可能になります。

    まとめ

    アクセシビリティテストは、法的側面、ビジネスメリット、ユーザー体験向上のすべてにおいて重要性を増しています。2024年4月の法改正により合理的配慮の提供が義務化され、企業には今まで以上の対応が求められています。

    手動テストと自動テストを組み合わせた持続的な運用が成功の鍵です。開発の初期段階からアクセシビリティ基準を組み込み、定期的な確認を行うことで、すべてのユーザーにとって使いやすいWebサイトやアプリケーションが実現します。

    ポールトゥウィンのソフトウェアテスト・品質向上サービスは、確かなスキルと豊富なプロダクト実績を活かし、アクセシビリティテストにおける課題解決をトータルでサポートいたします。

    リソース不足や品質担保、専門性の確保でお悩みの際は、ぜひご相談ください。

    関連サービスの詳細はこちら