多端末検証とは何か?
多端末検証とは、Webサイトやアプリが異なるデバイスや環境で同様の品質で動作することを確認するためのテストです。
異なる種類の端末やOS、様々な条件を組み合わせてテストを行い、開発したシステムが複数のOS・バージョンの利用環境下で安心かつ快適に利用できるかを検証します。
端末のシェア率やスペックなどを考慮し、適切な端末を選定し、効率的かつ包括的にテストを実施することが不可欠です。多端末検証を通じて、利用者がさまざまなデバイスや環境で快適に利用できるよう品質を確保します。
スマートフォン、タブレット、パソコンなど、様々なデバイスでECサイトが適切に表示されるかどうかを確認する必要があります。
スマートフォンの場合、画面サイズが小さくタッチ操作が主流である一方、パソコンの場合は、画面サイズが大きくマウスやキーボードでの操作が一般的です。
ECサイトを利用する際に、異なるデバイスや環境でも利便性や品質が損なわれることなく、快適に利用するためには、レスポンシブデザインが必要であり、快適に利用できる環境が多いほどユーザーの満足度は向上するため、質の高いサイトになります。
※レスポンシブデザインとは
Webサイトやアプリが様々なデバイスで見やすくなるように自動でレイアウトを調整するデザインのことです。端末の画面サイズや解像度に応じて自動的にレイアウトが調整されるため、ユーザーがどのようなデバイスでサイトを見てもストレスなく利用できます。
昨今ではコンシューマ機やスマートフォンなど、複数のプラットフォームで同じゲームを提供するマルチプラットフォームが主流となっています。このような場合、コンシューマ機やiOS、Androidなどのプラットフォームでアプリが正常に動作するかどうかを確認する必要があります。さらに、スマートフォンでは、さまざまなスペックを持つiOSデバイス(iPhoneやiPad)やAndroidデバイス(Samsung GalaxyやGoogle Pixelなど)でも動作するかを確認する必要があります。
多端末検証では、それぞれの環境でアプリが正常に動作、表示されることを確認することの他、端末固有の問題の検出、推奨動作環境の決定にも用いられ、ユーザーにとって快適な体験を提供するために行われます。
多端末検証を行わないことで発生する問題
多端末検証は、様々なデバイスや環境でシームレスなユーザー体験を提供するために不可欠なテストです。多端末検証を行うことでユーザーがどのデバイスやブラウザを使用しても、適切に表示されるだけでなく、機能も正常に動作することが期待されます。しかし、検証を怠ると以下のような問題が発生します。
特定のデバイスやブラウザでの画面表示に問題が生じる可能性があります。例えば、レイアウトが崩れたり、画像やテキストが正しく表示されなかったりすることがあります。これによりユーザーは情報を見落としたり、意図しないレイアウトで表示されたコンテンツに混乱したりします。
特定のデバイスやブラウザでの機能が正常に動作しないことがあります。例えば、フォームの送信ができない、ボタンが反応しない、ページが正常に遷移しないなどの問題が発生する可能性があります。これによりユーザーはサービスを十分に利用できないと感じ、不満を抱く可能性があります。
多端末検証を行わないことによる影響

多端末検証を行わないことにより発生する問題は、ユーザー体験に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には以下のような影響が生じる恐れがあります。
デバイスやプラットフォームにより操作方法や表示方法が異なる場合、ユーザー体験が一貫せず、ユーザーが混乱したり、ストレスを感じたりすることがあります。一貫性の欠如は、信頼性や利便性の面でユーザーに不安を与え、サービスの魅力を損なう可能性があります。
Webサイトやアプリがデバイスにより適切に表示されない場合、ユーザーのサイト離れを引き起こす可能性が高まります。特にモバイルユーザーは、表示が適切でない場合や操作が難しい場合、すぐに他のサイトやアプリに移動する傾向があります。顧客の離脱は、ビジネスにとって重大な損失であり、競争力を失う恐れがあります。
多端末検証で確認した不具合事例
多端末検証の重要性を理解する上で、実際の不具合事例を通してその影響を考えてみましょう。当社の多端末検証で検出した不具合について紹介します。
確認端末 | iPhone SE 第2世代 |
確認対象 | Webサービス |
確認した挙動 | Webサイト上で下画面方向にスクロールした際、フッターを超えて大きく不要な余白が表示される |
確認端末 | iPhone SE 第2世代 iPad mini 第6世代 |
確認対象 | Webサービス |
確認した挙動 | ・他端末では正常に表示されているコンテンツが該当機種のみ画像と文言が重なっている等、表示崩れが発生している。 ・横画面にした際、サイズが最適化されておらず、コンテンツが画面内に収まっていない。 ・他機種では押下できるボタン、リンクが反応しない。 |
確認端末 | Galaxy Z Fold 3 |
確認対象 | ゲームアプリ |
確認した挙動 | ・開いた状態のメインディスプレイで使用時、画面全体が縦に伸び、横に縮んでしまう。 ・表示されている文字列がボタンに大きく重なってしまうため、操作困難な状態になる。 |
備考 | フォルダブルスマートフォン(折りたたみスマートフォン)は現在では最適化されているアプリも増えているが、今回事例となった「Galaxy Z Fold 3」では開いた状態のメインディスプレイのアスペクト比が22.5:18と一般的なスマートフォンとは大きく異なるため、最適化されていない場合には上記のような挙動が確認された。 |
確認端末 | 特定Android端末 |
確認対象 | カメラを用いたモバイルアプリ |
確認した挙動 | アプリ内でカメラ起動時、画面の表示がブラックアウトしてしまう。 |
備考 | 開発に使用しているUnityを最新版にアップデートした影響により、特定端末で上記現象が発生しました。Unityのダウングレードを行い対処しましたが、結果として開発全体に影響が出てしまった。 |
確認端末 | Pixela5以降の機種 + AndroidOS14端末 |
確認対象 | ゲームアプリ |
確認した挙動 | アプリ操作中に原因不明のアプリクラッシュが発生してしまい、以降起動後すぐにクラッシュするようになる。 |
備考 | AndroidOS14がPixel系端末で配布開始された際に確認された現象で、後日配布されたアップデートにて解消された。アプリのキャッシュサイズなどが原因と考えられていたが、原因は特定できず、この現象が確認されてからは現象解消まで上記端末+OSの組み合わせは多端末検証時に必ず含めることとなった。 |
その他、特に古いAndroid端末などでは特定のアプリを起動するとクラッシュが発生するケースもありました。様々な環境でWebサービスやアプリを快適に使うために多端末検証は不可欠です。
検証端末選びのポイントとコツ

多端末検証を行う際には、適切なテスト端末の選定が重要です。さまざまな要素を考慮して端末を選ぶことで、より効果的なテストを実施できます。以下では端末選定時の主なポイントとコツについて紹介します。
各デバイスのOSバージョンで選定します。古いバージョンや最新のバージョン、さらにはベータ版など、主要なバージョンをカバーすることが重要です。特定のバージョンでの問題やバグを特定するために、マイナーバージョンを含めた幅広い選択肢で選定する必要があります。
【iOS端末】
あえて古いバージョンを使用しているユーザーもいますが、デバイス間のシームレスな同期やアップデートが可能なため、最新版を利用するユーザーが多い傾向にあります。
【Android端末】
メーカー側が端末毎に最新OSのアップデートを提供していないケースもあるため、最新版ではないOSを使用しているユーザーが多い傾向があります
画面サイズと解像度は、Webサイトやアプリの表示に大きな影響を与える重要な要素です。
スマートフォン、タブレット、ノートパソコンなど、それぞれの画面サイズは端末により様々です。デバイスの解像度により、表示されるコンテンツの鮮明さやレイアウトが異なるため、解像度によっては表示されるコンテンツが表示されない、潰れてしまう、拡大縮小が機能しないなど、ユーザーエクスペリエンスに影響を与えてしまいます。
したがって、低解像度のデバイスから高解像度のデバイスまで、様々な解像度を持つデバイスを選定してテストします。ユーザーがどのデバイスを使用してもWebサイトやアプリを快適に利用できるようになるため、ユーザーエクスペリエンスが損なわれることなく利用できます。
多端末検証時の端末選定において、端末のシェア率は大きな選定ポイントとなります。
検証対象となるWebサービスやアプリのターゲット層の多い端末を選定することで、より効果的な結果を得ることが可能です。例えば、iPhoneは10~30代のユーザーが多く、Androidはらくらくフォンの所有率の影響で60代以降の利用率が多い傾向にあります。また、日本国内ではiPhoneやSamsung Galaxyの人気が高く、中国ではXiaomiやHuaweiなどが支持されているため、地域によってもシェアは大きく違います。利用者が最も頻繁に使用するデバイスを把握し、テストの優先順位を決定することが重要です。ただし、デバイスのシェア率は新しいデバイスの登場や、特定のブランドや機種の人気により変動することがあります。したがって、多端末検証時には都度シェア率を確認する必要があります。シェア率を考慮することで、開発者はリアルな利用環境を再現し、ユーザー体験を最適化するための効果的なテストを行うことができます。
デバイスの中核となるCPUの性能は、Webサイトやアプリの応答性や処理速度に大きな影響を与えます。高性能なCPUを搭載したデバイスは、処理が高速で快適なユーザー体験を提供できます。一方で、低性能なCPUを搭載した古いモデルのデバイスでは、動作が遅くなったり、一部の機能が制限される可能性があります。
古い端末を利用しているユーザーは少ないかもしれませんが、そういった方々にも快適なユーザー体験を提供することが重要です。例えば、地図アプリや金融系アプリが古い端末で正常な動作が保証されない場合、生活に影響が出てしまう可能性があります。したがって、古いモデルのデバイスでも動作を最適化することで、より多くのユーザーにサービスを届けることができます。
まとめ
今回は、多端末検証の目的及び端末選びのポイントとコツをご紹介しました。多端末検証はWebサイトやアプリが様々なデバイスやプラットフォーム上で適切に動作するかを確認する重要なプロセスです。今回ご紹介したポイントを考慮することで、Webサイトやアプリで一貫した品質を保つことができます。
ポールトゥウィンでは、600機種5,000台以上のスマホ端末、PCの新旧OSを多数完備しており、お客様のご要望に応じたテスト環境をご用意します。
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